一瞬の空白
信号待ちの間にメールを読み、レスをする間に信号が青になっていたのですが、青になったことに気付かず(後の部下の話では)10秒ぐらい経った頃でしょうか、信号待ちの行列に一瞬の空白が生まれ、車の後方で「ドッカーン」という音がしたかと思うと、その数秒後私の車にものすごい衝撃が走り、中に乗っていた私たち二人が、シートベルトが食い込まんばかりに前に突き飛ばされました。

前の車にぶつかるわけにはいかないと、私はブレーキペダルが曲がるほど強く踏み、少し前に押し出されましたが、とりあえず前の車は信号が青になって走り出していたので追突は免れました。しかし、首や体に、いちどに上から下まで、頭の中でバチッ!と脳内にフラッシュが焚かれたような、なにか打ち付けたような痛みが走り、同乗していた部下は動けなくなっていたのです。
車を降りたら、白いスポーツタイプの乗用車が私の車に追突していたのですが、その車は更に後ろの車に追突されていて、3台の玉突き事故だったようです。
一番後ろの車は軽乗用車でしたが、運転していた若い女性は泣きながら携帯でどこかへ電話しているらしく降りようともしません。真ん中の乗用車の運転手だった若い男性に「大丈夫ですか?」と声をかけたら、やはり衝撃でダメージがあったみたいでとりあえず救急車と警察を呼びました。
119番のほうは○○図書の前の交差点と言えば「すぐ出動します。」と応答があったのに110番のほうは「あなたの名前を言いなさい。今いる『住所』を言いなさい。」とずいぶん高飛車な物の言い方をします。
しかも通りすがりなので住所がわからない。
「○○図書の前」とか「○○歩道橋の北側」と言っても「住所を言え」の一点張りです。
頭に来たのでわからないから「○○図書をそっちで探して来い」と言って電話を切ったら警察署はすぐ近くにあったので5分もかからないでやってきました。
「来れたじゃんか。」と心の中では110番で出てきた職員に無性に腹が立ちました。
中央分離帯に近いほうで事故が起きたので、警察はすぐに交通整理を始め、車を路肩のほうに移動させて事情聴取が始まります。ところが救急車が来て一番後ろで追突をしてきた女性運転手が逃げるように乗って搬送されて行ってしまったので、本当は一番重症だった真ん中の運転手と私しか残っていませんでした。
真ん中の運転手の話だと、信号待ちの間は彼が最後尾だったようです。
信号が青になったので出ようと思ったのですが私が動かなかったので待っていたら、後ろからやってきた軽乗用車が停まらずに突っ込んできて、その衝撃で私の車に追突をしたというのが真相だったようです。

結局、示談を交わす最後の最後まで、最後尾の女性運転手は私たちの前に現れませんでした。車の中で泣きながら電話をかけ続け、最後まで降りてこないで、救急車がきたら一瞬で消えてしまった無責任女。あとから素性を聞きましたが、瀬戸内海に浮かぶ島に住む女性だったとのことです。示談は保険会社としましたので、後日警察署に出頭して調書を作成する際に、警察官から聞いた話しか彼女の情報は入ってきませんでした。傷害事件という刑事事件で被害者が加害者のことを教えてもらえないというのも変な国です。テレビで取調室でベラベラ喋る刑事なんて現実には存在しないそうですよ。
重傷者が3名いましたので、20万円程度の罰金と免許停止3か月(当時)は免れられなかったのではと思います。(実はどういう刑罰を受けたかも知らされなかったのです。)重傷者というのは、ひとりで全治1か月というものでも、複数人の合計が全治1か月でも同じ扱いです。
ちなみに罰金は刑事罰で免許停止は行政処分です。私の住む街では、刑事罰は交通事故事案では検察に呼ばれて調書を作成したら、検察官のデスクのすぐ裏にあるドアの向こうに簡易裁判所があり、非公開の略式手続きが行われ、公判手続きを省略して業務上過失致死傷等罪で罰金刑が言い渡されます。
一方、行政処分は、だいたい地方の免許センター内にある交通事故の処分を行う警察の部署で、”聴聞”という手続きに呼び出され、警察職員だと思いますが制服を着た主宰者相手に自分の意見を述べる機会を与えられ、ほとんど警察の捜査で事実は判っていますので、聴く気があるとは思えない流れ作業で、最後にたいていその場で免許停止を宣告されます。
交通事故の場合は、事件の数が半端ではないですから迅速に粛々と手続きが進められます。
その後、真ん中の車の運転手にも救急車が来て病院に搬送され、車は警察官がどこかに移動してしまいましたが、とりあえず動けた私だけ自分で車を運転して帰ることになったのです。
部下が先に救急車で搬送されていましたのでその病院を教えてもらい、様子を伺いに行きました。区をまたいで事故現場から10kmぐらい南下した救急病院に運ばれていました。彼女のレントゲン写真を見ましたが、本来軽くカーブを描いているはずの背骨がまるで一本の棒のように真っすぐになっていて、よほど筋肉が硬直してしまったのでしょう、かなり痛い思いをしたようで2~3日様子見で入院した後、1ヶ月自宅療養をするほどの重症でした。
真夜中の交通事故。私の記憶は遠く山の向こうに見える満月だけが鮮明に残っています。
自動車保険(任意・自賠責保険)のはなし(4)へすすむ
コメントを残す