ヒューマンドキュメント生命保険編(16)

ヘルニア(脱腸)8 生命保険請求

 手術明け、何事もなかったかのように出社したのですが、会社の方で大きな動きがありました。

 上司が突然変わったのです。

 しかも前の上司は、私の部署に半年前に赴任してきたばかりでした。何があったのかよくわかりませんが、次の上司はとても厳しいことで名の通っている強者の上司でした。

 サラリーマンの中で上昇志向の強い人が必ずいますが、なにがなんでもTopに立ちたいと、根っからの経営者肌の人とは、自ら自身のブランドを高めて、周りから認められてその地位を確立させているようですが、いわゆる国家資格のような目に見えて第三者からのお墨付きがあるわけではありません。

 しかし、見ているところが違うのでしょう。ある集団の代表という点で、導く力が問われる職業です。自分はできなくてもいい、できる奴を連れてくる。将棋の指し手の立ち位置を私製の資格とでも名付けましょうか。あらゆるライバルを蹴落として、その地位を掴み取るマウント合戦の勝者としか、そのレースに参加していないものは表現することができません。

 出世レースには興味がなかったのですが、上昇志向が極めて強い新任の上司の下で、今の仕事が続けられるのかどうかはとても気になるところです。しかしながら、上司が変わったことで、手術のことも誰にも話さないままになりそうです。

 さて、思いの外高額な治療費になってしまいましたので、退院するときにすでに保険金請求書に添付する診断書ももらっていましたから、あとは生命保険会社に送るばかりです。書類を揃えて郵送したのでした。

 仕事の方は、新しい上司がやたら介入してくる面倒くさいことになってきました。事業としてはこれまで以上に推進するという方針になったようですが、この事業には大きな盲点というか欠点がありました。

 事業を行うのに、通常、運転資金はファイナンスを利用して行います。現金商売で回せるという会社は極めて稀ですし、今の超低金利時代、手元に資金があるのであればそちらは投資に回して、事業の方はファイナンスを利用して利回りをうまく利用した方がいいこともあるのです。

 しかしながら、私の会社は急成長で販路拡大していましたので、あまり現金を持っていません。加えて、ファイナンスを利用するのに、経理上の書類で表に出せないものがあるため、銀行がお金を貸してくれません。これが一部上場企業であれば、すでに公開されているものですので、ファイナンス上のアキレス腱があったのです。そのため、いまだに軌道に乗るか乗らないのか不透明なものでありました。

 10日後、ポストに生命保険会社からの封筒がポストに入っていました。

 「おお!来た来た!金欠で困ってたんだよな〜!こんどはいくらかなぁ」

とワクワクしながら封筒を開けます。

 「随分薄い封筒だなあ。なにかのお知らせかな?」

 ドキドキしながら中身を開くと”お知らせ”と書いてあります。

 ”謹啓 益々ご清祥のことと心からお慶び申し上げます。このたび貴殿からご請求のありました下記特約の保険金につきまして、厳正に精査致しましたが非該当となりましたのでご連絡申し上げます。ご不明な点は下記フリーダイヤルにてご案内申し上げます。謹白”

 「ん?」

 「ん?」

 「非該当?」

 意味がわかりませんでした。

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