胃潰瘍その4(術後奮戦記)
数時間後、悪夢のような寒気で目が覚めました。

体が凍ったような状態で震えが止まりません。全身で体温を上げようと闘っています。しかし追いつかずガタガタガタガタと震えっぱなしです。
あとで知ったのですが、術中、体温を下げているので寒いのは当然です。でも次から次へと襲ってくる悪寒が強烈で、心臓が止まりそうです。
目を開けるとリカバリー室でピンクの看護師さんたちに囲まれていました。すこし恰幅の良い師長さんが電気毛布を持ってくるように指示し、若い可愛らしい、いや、アイドルレベルの看護師さんが身体にかけてくれました。

こんな状態でも、女の子には反応してしまうのは本能です。伊丹十三監督の処女作「お葬式」の1シーンで、がんの手術をし、生死を彷徨ったのちに退院する後期高齢者レベルの男性が、車の中で、自転車を駆け抜ける女子高生を目で追う忘れられないシーンがありますが、男は死ぬまで男なんです。
まだ震えまだ震えています。体は痛いし、横にもなれずに上を向いたままでしたので、腰にもきていました。
腰が痛いということは、そのまま足にも神経痛が走ります。だんだん足の感覚が麻痺してきました。この姿勢のままではいまにこむら返りを起こしそうなほどふくらはぎに神経痛が走っていました。
でも横を向いてはいけないときつく言われます。
お尻が痛い。
でも姿勢を変えさせてもらえませんでした。
おしっこが漏れそうで看護師さんに「漏れそう」って訴えたら「そのまましていいわよ。」って返されました。全身麻酔だったので尿道カテーテルを挿入されていたのでした。
麻酔が効いて眠っている間に手術室の看護師さんに尿道に突っ込まれていたのでしょう。記憶はありませんが考えてみると小恥ずかしい姿を想像しました。ただ尿道に管を突っ込まれているわけですからこれは結構痛かったですし、術着が開けていましたので、よくよく考えると下半身丸出しで、10人くらいの看護師さんに囲まれていたことになります。
麻酔が完全に切れていないので膀胱に力を入れようとするのですが思うように力が入らない。なんか尿道に焼けるような感覚がしてじわじわと熱いものが通ったというより、染み出る感じがしました。おそらくおしっこが通過していたと思うのですが、感覚がないのでよくわかりません。どちらかというと尿道の内部に熱い感覚がずっとあるので残尿感が消えないいやな感じがつきまとっていました。痛い・痛い・痛い!!!!!!!!!!!
とにかく痛い。
まず左のお尻がものすごく痛い。
右の二の腕が無茶苦茶凝って痛い。
気管挿管で喉がひりひりする。この痛さも喉が切れてるのではないかと思うぐらいです。
酸素吸入のマスクなので、口で息をしますから、口の中から唇までパリパリに乾いてくっついてしまう。

腰が痛い。
頭が痛い。
酸素マスクを取ってほしいと懇願しましたが若い看護師さんが可愛い顔をしながら朝までダメだと言われました。天使のようにきれいな人だったので「鬼」とは呼べませんでした。
その代わりに口に水を含んでもいいからうがいをしなさいと言われました。
夜中じゅう30分置きにうがいをしてもらいました。うがいをしたくて彼女を呼ぶのか彼女を見たくて呼ぶのか、ここでも男とは生死をさまよっていても「女」が気になる生き物らしい。。。人類が絶滅しないで繁栄をしてきた理由をこんな時に悟ったのでした。
ところでなぜかリカバリー室に両親がいる。手術のことは隠していたのに女房が呼んだらしい。私の母はあの輸血を拒否することで有名な宗教団体の一員なので面倒なことになると困るから隠して入院していたのに勝手に呼んだみたいでした。
容態が安定したので親父と女房は帰る話を向こうでしているのが聞こえるのですが「いま1時」と言うのが聞こえる。
「1時」????????????????????????
実は3時間で終わるはずの手術が8時間かかったらしいのです。
だから終わったのが21時過ぎでそれから処置してリカバリー室に戻ったのが23時頃。
だんだん答え合わせをする余裕が出てきました。
手術室の中はもともと寒いくらいの温度設定で裸同然で8時間大股拡げて寝ていたので体温が35度くらいに下がっていたようです。電気毛布に包まれてやっと体温が回復しました。というより今度は発熱してずっと40度をさまよっていました。
なので当然頭痛がするはずです。
腰はよく考えたら、手術直前にうかつにもギックリ腰やっちゃってましたから痛いのは当然です。
右腕は血圧計が巻かれて自動で1分置きに計測するために腕を締め付けるのでこれも痛いのはしかたない。
不可解なのは左のお尻がなぜ痛いのかずっと判りませんでした。これは一週間後に入浴を許されたときにお風呂の鏡を見て判りました。
8時間同じ姿勢でいたため床ずれを起こしていたのです。左のお尻がはれ上がって紫になっていました。硬くなってしまい今でも座るときに痛いです。この床ずれは、治るのに1年かかりました。
なぜ8時間も?ここで8時間もなぜかかったのかという疑問が湧きます。
翌朝、執刀医が回診に来て開口一番「あんたは大変だった。」と言われました。
なにが大変かというとこの身体ですから、おなかも相当出っ張っています。中身は内臓脂肪。メタボリックシンドロームの典型例です。
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