番外編
住宅金融公庫政府系金融機関のひとつに住宅金融公庫(現在は形が変わって住宅金融支援機構)があります。
物件の属性(地域・規模・付帯設備)の範囲内の限度額で本人の平均月収の5分の1までの支払額に抑えればほとんどの人が利用できた日本の経済を支える重要な融資機関でした。
その融資可決率は優れもので、比較すると銀行ローンの場合、サラリーマンで勤続3年以上、自営業で営業開始から3年乃至5年という基準がありますが、住宅金融公庫の場合は、転職後1~2ヶ月で融資を引き出せるほどの庶民の味方というべき金融機関でした。
本来、マイホームのためのローン返済は、マイホームを持たない人にとっては家賃とのすり替えにすぎません。
家賃程度の支払いは可能なはずなのです。
ただ、当初の支払い基準をクリアさせやすくするためにステップ返済と言って、最初の5年間は支払いを低くし、その返済額で年収の5分の1基準をクリアさせたような無理な審査基準があって、そのころの金利は年利4%超くらいでしたので3000万円の借り入れの支払いが当初月7万円、ボーナス40万円くらいでこれが5年経過すると月10万5000円、ボーナス60万円になっていたのです。
バブル経済前のシステムでしたので、バブル崩壊後日本中のあちこちで悲鳴があがったローンでした。
ですから、一時、全世界を震撼させたサブプライムローンを原因とした海外経済の停滞のケースは、コンセプトがかつての住宅金融公庫のステップ返済に似ていますので、世界は、当時経済の中心であったニッポン経済の崩壊という前例の学習をしていないとも言えるでしょう。
こんな住宅金融公庫でもローンの通らないケースがあります。
私の見てきた中で、やられたというのをご紹介しましょう。
40代男真っ盛り、いかにも肉体労働者という感じの男性を筆頭に奥さん、娘、娘婿の4人で一戸建てを買いに各団地を回っていた一家がありました。
気に入った物件があり、男性が娘婿に買わせたいんだと営業に商談を持ちかけました。
しかし、よく聞いてみると、その娘婿と名乗る若い男性は、その義父の経営する土木会社の従業員で、まだ21歳でした。
ローン基準では21歳がいけないとはないので、営業も契約を勧めます。
しかし、問題がひとつ。その娘婿の勤続が、まだ6ヶ月だったのです。
そこで、営業は住宅金融公庫のみで買える物件を勧めました。
そして、いままでの6ヶ月分の給料を6で割って12で掛け、年収換算に割り戻した数字を所得証明の代用にするため、義父にあたる男性の経営する会社名義の「給与証明書」を発行してもらい住宅金融公庫に申し込みをしました。
通常なら、数字上ではすべての基準をクリアしています。
一週間後、男性から電話がかかってきました。
「公庫から封筒が来たんだが、融資できないと書いてあるぞ!!話が違うじゃないか!!」と怒りの電話でした。
営業はすぐさま、自宅に赴き事情を伺いました。
「おかしいですね、通らないはずはないんですが・・・。娘婿さんは、消費者金融の借り入れがあるとか隠してないですか?」と探りをいれましたが、どうも違う。

義父の男性は、市内を一望できる小高い丘にそびえ立つ分譲マンションに暮らしています。

なにも解決策がないまま、四方山話をしているうちに、義父の男性が、「実は、わしはいま公庫ともめているんじゃが、それかのう。」と相談を持ちかけられたのです。
聞くところによると、その義父は酒癖が悪く、ほんの1年前に酒に酔った勢いで喧嘩をし相手を大怪我させたため、半年ほど別荘に行っていたそうなのです。
その間、住宅金融公庫への支払いはストップ。
当然住宅金融公庫は一括返済を求めて来ます。
出所して事情を説明し、担当者レベルでは支払いが再開できそうだったところへ住宅金融公庫の本部から一括返済の通知が届き、マンションの差し押さえまでされてしまった、まるで不意打ちを喰らった状態だったようなのです。
そのため、新居を探すべく従業員を使ってローンを組ませようとしたというのが事の真相でした。
娘婿というのが真実であれば別段詐欺でもなんでもありませんので融資が通ってもいいようなものですが、なにしろ焦げ付いた融資名義人の経営する会社の従業員が正規の所得証明でなく、会社の発行する給与証明で申込んだのですからまず融資可決は無理な話でした。
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