クレジットヒストリー物語(7)

取立停止依頼書

 弁護士が、破産申立の依頼を受けると一番にする仕事が、各債権者に対して

・破産申立の依頼を受けたこと

・今後は窓口は当弁護士のみになること

・直接の債務者へのコンタクトを禁止すること

・よって取立てを一切行わないこと

 以上の内容の通知を出します。

 届出済み金融機関がこの通知を受けると自主規制で一切の債務者へのコンタクトが停止します。

 拘束力がないので、一部街金や闇金は無視をして取立てを続けますが、このように優良な金融機関を選んでもしものときに備えておけば、これ以後の督促がピタッとなくなります。

 破産の申立をする頃は、通常の人でも正常な精神状態を持ち合わせていませんので、弁護士に依頼するだけでかなりの精神的余裕を与えられることになるのです。

 ここで、人生を見つめなおすのもいいでしょう。

 ところで、私の債権者ですが弁護士の説明の通り、みごとに督促がなくなりました。

 同時に、家族を巻き込んででも破産の道を選んだ私ですので、それなりの決意と緊張をもって裁判所の呼び出しを待ちました。

 平成半ばの破産申立事情ですが、東京地方裁判所受理分で月に3000件というところでしょうか。

 だんだん裁判所の事務処理能力に限界が訪れてきていた時代でした。

 そのため、受理後呼び出しまでに事前に入手していた 1ヶ月程度という情報があったのですが、次第に半年はかかるという話を聞くようになっていました。

 今では新破産法が施行されていますので、破産申立と同時に免責の申立も行われますが当時は破産申立があって審議に入り、破産宣告を経て破産手続きの終了まで約8ヶ月。その後1ヶ月以内に免責の申立をして2~3ヵ月後に免責決定を経て、官報に公告されて2週間後が晴れて復権する日というのが一般的なスケジュールでした。

 1ヶ月間は緊張の毎日でした。

 1ヶ月を過ぎ、2ヶ月目 に突入するとそろそろだとさらに緊張が高まります。

時間が経つ

 3ヶ月、4ヶ月・・・。

時間が日々経つ

 弁護士に問い合わせをします。

 「まだ呼び出しがないんですよ。気長に待ちましょう。」

 弁護士が言うのですから、そうすることにします。

時間とともに年月が経つ

 だんだん緊張の糸が切れてきます。

日々年月が経つ

 債権者からの督促がないので、次第に自分が破産者状態になっていることすら忘れてしまいます。

 それから2年経った頃サービサー(債権回収会社)から電話が鳴りました。

 「破産する通知を受けてますが、受理番号を教えてください。」

「○○法律事務所に一任してますので、そこに聞いてください。」

 なんかこんな会話を1年ごとにしてた気がします。

 さすがに5年経って、おかしいと気がついた私はノンアポで弁護士事務所に押しかけました。

 「私にもしものことがあったとき事情を知らない家族が私を相続してしまう。そうなったら、家族に借金が・・・しかも利息があるので元本の倍近くになった借金が家族に降りかかる 」から早く手続きをしろと事務所で怒鳴ったものでした。

 すると弁護士は資料を見ながら思いもよらないことを切り出しました。

 「最後の弁護士通知から5年経過しています。その間どの金融機関からも裁判上の請求を受けていません。」

  この意味がわかるでしょうか。

 わたしは解ってしまったのです。民法では請求を受けることなく10年を経過した債権は時効消滅します。しかし私の債務はほとんど会社の借金。商法の適用を受けるため、信用金庫から借り入れた個人的自動車ローン以外の時効が5年 で訪れていたのです。

 「このまま破産の手続きを進めてもいいですが、まずはもう一度弁護士名で《消滅時効援用通知》を出してみませんか?これで異議を唱える債権者がいたら、もう一度破産を検討したらいいですよ。」

 この弁護士、本当は破産申立書を裁判所に出すのを忘れていたのです。

 報酬の安い案件はすべて補助者に任せていて、補助者の報告を鵜呑みにしていたらしいのです。

私にしてみれば、破産を避けることができるかもしれないチャンスに立ったのですから怒るより、そっちの方向性を探ることが懸命だとひょうたんから駒のような話ですが、乗ってみることにしました。

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