クレジットヒストリー物語(5)

弁護士依頼

 曲者とは言っても、悪徳弁護士ではありません。

 怠慢なのか、戦略があってのことだったのか不思議な弁護士事務所でした。


 商工会議所での法律相談で紹介された某弁護士でしたが自己破産を決意して、事務所を訪問する予約を入れました。地方裁判所に程近い古びたビルの4階。今にも壊れそうなエレベーターに乗ってドアが開くと、そこはもう事務所です。補助者の男性が一人、あとはパートナー弁護士と3人でやっている事務所のようでした。


 お茶が出され、これまでの経緯を説明するといくつかの書類を出され、持って帰って必要事項を書いて改めて持ってくるように言われます。

 すべて対応は補助者がします。弁護士は最初に話をしただけ。

 とはいえ、自己破産を迷っているのであればともかく、決意して来所しているのですから話は早い。
 それと、次回来るときには依頼料60万円を持ってくるようにと付け加えられました。ちょっと高いなぁ・・・。 

 私の心も、私の財布も、季節も秋でした。冷たい風が吹くなかで、未だまわりが蠢く紅葉の森です。虫の息です。

紅葉

 書類は、弁護士に一任するのですから・委任状・破産申立書・債権者リストの3種類の書類です。そして、
1 債権者を絶対に漏らさず書くように、漏れると大変なことになること
2 債権額(元本)を正確に算出すること、不正確だと大変なことになること
3 今日以後絶対に、勝手に返済をしてはならないこと

この3つをきつくきつく言われたのでした。

 破産申立てをする際に、当時は手元に現金40万円以上あるようだと同時廃止にならないルールがありましたので、現金を持ち続けることはできませんから、弁護士費用の60万円をケチる必要はなかったのです。
 このころから私の財布の中はできるだけ現金を持たないよう1000円札が1枚だけ入るようになりました。

1000円札

 このように、手元にある現金についてはものすごく気を付けていたのですが、盲点がひとつありました。


 加入している保険も記載事項だったので、当たり前のように県民共済と、がん保険を記載していました。
 すると弁護士から「がん保険は積み立て式ではないのか?」と問い合わせがあり、まさか月々3300円でしたので「掛け捨てだと思います。」と答えました。

 しかし、弁護士が念のため保険会社に残高証明を請求してほしいというのですぐに請求しましたら、解約返戻金の欄に400,000-と記載があったのです。
 大学を出て新卒で入社した会社で、付き合いで入らされたがん保険、かれこれ、15年払い続けていました。
 たった3,300円ほど毎月口座引き落としになったまま年月が過ぎ、結構な額になっていたのでした。

 弁護士から「すぐに生活費として使ってしまってくれ。」と言われ、たまたま到来していた車検に半分以上費やして、あとは生活費に消えました。

一口メモ解説者 天堂教授

一口メモ
 破産手続きには二つの手続きがあります。
 自分で申し立てをしても全然構いませんが、裁判所から破産手続開始決定(昔はここで「破産宣告」となっていました。)のあとに、精算するべき財産がなければ、同時廃止となりますが、ある程度債権者に返済できる原資(33万円以上の現金や、価値が20万円以上の資産)があれば少額管財という手続きで、残った財産を債権者の頭数と債権額に比例して配分する手続きがあります。
 申立てをしてからそれまでの間は、逃げ回っているときと変わりがありませんので、債権者の中には自宅にも会社にも督促状を送り続け精神的圧迫を掛けようとするような債権者もいますので、こういった方々に弁護士から、受任通知と、督促状は今後は弁護士宛に送るよう通知を債権者に出してくれます。そうなると精神的圧力の効果が薄れるため、債権者はなにもしなくなるのです。

 まず、自分の総財産額と、今後の収入見込み、そして債務がどれだけあるのか整理したものが破産申立てに最も必要な情報となります。

なぜ自己破産と言うのかといいますと、破産手続きは、債務者が耐え切れずに自分から申立てをするケースと、債権者が、債務者の持つ財産を洗いざらい出させて強制的に債権回収をしようとするケースがあるので、債務者が自分で申立てをする場合を自己破産と呼んでいます。債権者が破産申し立てをするメリットとして、破産申立があると、債権者の持つすべての財産目録を作成することになり、隠し財産がバレると詐欺破産罪に問われ、こうなると破産しても免責がもらえないことから、回収見込みを早期に立てることができることが挙げられます。

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