クレジットヒストリー物語(1)

序章

 これから、とある起業家が事業に失敗し、サラリーマンとして自力で再起を図りながら金融の世界での信用を取り戻していく過程を紹介しながら、「クレジットヒストリー(金融履歴)」の構築方法について考えていきたいと思います。

 会社を倒産させても、中にはその才能を見出されてスポンサーがつくことで、人生のショートカットができる経済的天才もいることでしょう。

 しかし、バブル経済が弾けたために破産に追い込まれた人よりも、その後の不景気の中で、消費者金融やクレジットカードの持ち過ぎによる多重債務に陥って破綻した国民のほうが圧倒的に多く、破産宣告後の免責について制限を設けることとなった「破産法の改正」を余儀なくされた国家事情について、あまりスポットライトが当てられて来ませんでした。

 時代は次第に電子化が進み、ネット決済、スマホ決済など現金支払で取引できない形態も増加して、金融事故によりクレジットカードが持てなくなった人々と、いまだスマホすら持たないデジタル格差に配慮するあまりに、この日本が世界で最もIT化の遅れている先進国と揶揄されている現状に歯痒い思いをしている人も少なくないのではないでしょうか。そもそもデジタル格差を生んだ元凶は、一部の限られた企業がぼろ儲けできるシステムとなった、日本の高額なスマホ料金だと思うのですが。近年の低額化の試みで、現金を持ち歩かない人が増えてきたのではないでしょうか。

 そのため、いまだスマホ決済を導入しようとしない店舗を消費者は避けるようになっています。スーパーマーケットのレジで、1円単位の小銭を数える人のもたらす渋滞も減ってきた気がします。

 この物語は、金融会社からの目線で申込者に対してどのように信用して、どのように疑っているのか、クレジットヒストリーがどのような役割を果たしているのかを感じていただければと思います。

焼肉(炎)

 いまから10年ほど前の夏の暑い日、わたしは新卒後に勤めていた会社を、思うところがあり退職し事業を立ち上げました。社会人のイロハを学んだ地場の堅実な良き企業です。社長以下アットホームな雰囲気で、当時の好景気のため、毎月数億円の売り上げで歩合を稼ぎまくっている上司といえば、大学を出たばかりの、まだまだ食べ盛りの私たち同期を引き連れて焼肉に頻繁に連れて行ってくれ、強靭な若い胃袋を満たしてくれたものでした。

肉の花

 東証平均株価も最高値をマークし、不動産は日々高騰する空前の好景気でしたので、企業は儲けるだけ儲けて、お金を使え、経費を使いまくれとばかりに、飲食費の領収証を持ち帰るような時代です。

 どうしようもない田舎の建売が4000万円ほどになった異常な世の中でした。

 世の中「お金」一色で、接待こそトップセールスの要とばかりに、経費を使わないことが悪のような扱いを受けたものでした。

 銀座では座るだけでチャージ料が60万円、一回の支払いが200万円なんてざら。

キャバ嬢
ワンレングス・ボディコン
ワンレングス・ボディコン

 ワンレンボディコンのきれいな女性が街中で溢れ、六本木のカローラと呼ばれた3シリーズの白いBMWで迎えに来るアッシー君が、彼女たちがディスコやフレンチでめっしー君と呼ばれる男たちと楽しんだ後に、ただ家まで送り届けていたバラ色の時代です。

BMW

 手にした現金をタンス預金にしてしまう現代では考えられない光景ですが、経済が回るというのはこのような状態を言うのです。


 起業していきなりの秋、厳島神社を壊滅させ、100万人都市を1週間以上塩害のため停電させた台風の洗礼を受けたものの、逆にそれが売上げにつながり幸先良く順調だった経営ですが、翌年には高景気崩壊とともに次第に悪化しながらでも地道にがんばったことで、なんとか8年間は持ちこたえました。

厳島神社

 悪夢は、消費税アップ直前の駆け込み需要による好景気によってもたらされたのです。


 駆け込み需要で、起業後最高の売り上げに沸いた翌年度、消費税がアップしたあおりをうけて急激に売り上げが落ち込みました。もともと借金の塊だった経営のため、そのときの利益はすべて借金の”一部”返済に。借金がすべてなくなるほどではなかったので、相変わらずの自転車操業に変わりはありませんでした。


 しかし、悲劇は容赦なく襲ってきます。 消費税導入前の好需要に伴う仕入れの手形決済が迫ってきたのです。
 これまではなんとか微妙なバランスで苦しいながらも資金を回していましたが、「空前の仕入高の支払い」が、「空前の売り上げダウン時の資金回収高で決済する必要」が出てきたため、もはや会社の余命も風前の灯でした。

  商社も感づき、次第に仕入れもできなくなっていたのです。「まだ荷が届いてない。」「税関で止まっている」など理由を付けて納品してくれなくなりました。こうなって店に商品がなくなってくると、面白おかしく「○○商事はあぶないぞ!!」と 知ったかぶりをして言いふらす輩(やから)も出てくるのです。
 商社も、あちこちで焦げ付きが出始めているので警戒心をあらわにします。

 メインバンクにいたっては、回収に入りました。 保証人を増やせというのです。さらに、言葉巧みに「国民金融公庫(当時)が無担保融資をしてくれるから取り次ぎましょう。」と取次店だった便利さから、再起を図り書類を整え申し込みをしましたが、これ以後のメインバンクの新規融資がないため、結局国民金融公庫の融資金が口座に入金されると、相殺という天下の宝刀を持ち出して、自己の貸出分の清算をする始末。

銀行

 永きにお取引いただいてくださった取引先が、 とりあえず3日分の商品を融通してくださったものの、4日後に迫る手形の決済ができないことが確定し、恩を仇で返すわけには行かないため、お借りした商品を返送したら、その配送トラック業者が「○○商事の動きがおかしい」と触れ回り取り付け騒ぎに。

 手形の決済日に、社員を全員呼んで 「このままでは最後の給料も払えなくなる。皆さんの給料は、2月分の売掛債権で必ずお支払いするが、それ以後の給料は処分できる財産もなくなってしまいもはや払えない。労働基準法上では、予告解雇を義務付けられているが、ない袖はもはや振れない。このまま、黙って辞めて欲しい。」と土下座して全員に月末でやめてもらい、ついに吹雪がふきすさぶ1月末日に1回目の不渡りを出したのでした。

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